ウルトラクリアは「レーザー界のエルメス」?!
ウルトラクリアとは?2910nmレーザーの特徴
ウルトラクリア(UltraClear)は、波長2910nmのエルビウム添加フッ化物ガラスファイバーレーザーを使用する、皮膚のリサーフェシング(表面の再構築)を目的とした医療機器です。
皮膚に含まれる水に吸収されるレーザー光を利用し、組織を微細に蒸散(アブレーション)させます。
皮膚表層の肌質改善を目指す照射から、真皮に達するフラクショナル照射、皮膚組織を柱状に除去するレーザーコアリングまで、治療目的に応じて使い分けることができます。
2910nmという波長の特徴
従来のCO2レーザー(10,600nm)やErレーザー(2,940nm)と同様に、ウルトラクリアも水を主な吸収対象とするアブレイティブレーザーの一つです。
ウルトラクリアの特徴は、組織の蒸散深度、フラクショナル照射密度、熱凝固の程度を調整し、異なる深さや治療目的に対応できることです。
メーカーはこの技術を「Cold Fiber Laser」と呼んでいます。
ただし、「Cold」は熱が発生しないことを意味しません。組織の蒸散と、周囲に残る熱作用を調整する技術を表す名称です。
組織にどの程度の熱作用が生じるかは、照射深度、パルス条件、照射密度などによって変化します。これが世界初の市販されている医療機器での初めての技術となります。
その精度と、ウルトラクリアモードでできる照射パターンが、エルメスのモチーフににていることからも、そう呼ばれるようになりました。
ウルトラクリアの主な治療方法
1.3DMIRACL・Clear系:皮膚表層へのアプローチ
3DMIRACLは、主に角層を対象とする浅いリサーフェシング治療です。
肌のざらつき、キメ、光老化に伴う色調の不均一などの改善を目指します。
2023年にBernsteinらが報告した20例の研究では、推定照射深度10µmの浅層モードを使用し、光老化所見の改善が認められました[1]。
ただし、この研究は3DMIRACLという名称の施術メニューそのものを独立に検証した研究ではなく、浅層照射技術に関する臨床データとして解釈する必要があります。
2.Ultra・UltraClear系:真皮へのアプローチ
Ultraは、真皮を含む深い組織を対象としたフラクショナルリサーフェシングです。
微細な蒸散部と周囲の熱作用によって創傷治癒反応を引き起こし、皮膚の再構築を目指します。
UltraClear系では、浅層と深層への照射を組み合わせる設定も用意されています。
小じわ、深いしわ、ニキビ跡、その他の瘢痕などでは、病変の深さや形状によって必要な照射条件が異なります。
3.Laser-Coring:皮膚組織を微細な柱状に除去
レーザーコアリングは、レーザーによって微細な孔を形成し、皮膚組織を柱状に蒸散させる技術です。
これが特にウルトラクリアでの注目の技術で、実際に皮膚の1%~5%など、設定により、切開するのではなく、皮膚を打ち抜いて創傷治癒がすすむことで、切開リフトにちかづけたり、瘢痕の面積を縮小したり、傷をなめらかにするように利用します。上瞼のタイトニングを行うのも、この方法です。
2024年のMurrayらの組織学的研究では、5例の顎下皮膚から得られた15個の微細孔について、平均直径242.5µm、平均蒸散深度980µm、周囲の熱凝固帯の平均幅104µmが報告されています[6]。
この研究によって真皮まで到達する組織蒸散が確認されていますが、長期的なたるみ改善や外科手術に匹敵するリフトアップ効果が証明されたわけではありません。
ウルトラクリアの臨床研究
光老化・しわへの効果
Selimらによる2023年のパイロット研究では、光老化のある37例を対象に、比較的浅い設定による複数回治療と、深い設定による単回治療が検討されました。
35例が評価を完了し、両群ともに肌の外観改善が報告されています[2]。
また、Murrayらによる2024年の顔と首を対象とした研究では、22例が登録され、最終評価を完了した15例で外観の改善が認められました[3]。
これらは2910nmレーザーによる光老化やしわの改善を支持する臨床データですが、大規模な比較試験による他機種に対する優越性の証明ではありません。
ニキビ跡への効果
2024年にBernsteinらが発表した研究では、ローリング型・ボックスカー型の陥凹性ニキビ跡が対象となりました。
最終評価を完了した13例に6〜8週間隔で3回の治療を行い、最終治療3か月後の写真評価において、平均47.3%の改善が報告されました[4]。
ただし、対象者はFitzpatrick II型・III型であり、より幅広い皮膚タイプや、アイスピック型を含むすべてのニキビ跡に同じ結果が得られるとは限りません。
深い癒着や皮下組織の欠損を伴うニキビ跡では、瘢痕の状態に応じて別の治療方法を検討する必要があります。
術後瘢痕・外傷性瘢痕への応用
2024年には、ニキビ跡、熱傷瘢痕、外傷性瘢痕、術後瘢痕など15例を対象とした後ろ向き症例集積研究も報告されています[5]。
単回照射後の変化が検討され、改善の程度は瘢痕の種類によって異なっていました。
瘢痕治療では、凹みだけでなく、瘢痕の厚さ、深さ、組織の硬さ、周囲との癒着なども考慮する必要があります。
ダウンタイムと注意点
施術後には赤み、腫れ、ヒリつき、点状出血、痂皮形成、皮むけなどが生じることがあります。
2024年の顔・首の臨床研究では、照射後の皮膚反応が5〜7日程度持続し、一過性の色素沈着が2例報告されています[3]。
また、炎症後色素沈着、色素脱失、感染、瘢痕形成などのリスクにも注意が必要です。
浅層の3DMIRACLと、真皮に到達するフラクショナル照射、レーザーコアリングでは、必要な創部管理やダウンタイムが異なります。
現時点の臨床研究は比較的小規模であり、長期経過、日本人を含む多様な皮膚タイプでの安全性、他機種との直接比較については、さらに検証が必要です。
なつクリニックのウルトラクリア治療
ウルトラクリアは、一つの機器で皮膚表層から真皮まで、異なる深さを対象とした治療を行えることが特徴です。
ただし、毛穴、ニキビ跡、しわ、皮膚の余剰などは、それぞれ原因となる組織の変化が異なります。
当院では、皮膚の厚さや瘢痕の形状、治療すべき組織の深さなどを診察で確認し、照射深度、熱作用、治療範囲を検討します。
機器の特性だけではなく、どの組織にどのような変化を起こす必要があるかを考え、治療方法を選択しています。
*ウルトラクリアは2026年10月現在、日本国内未承認品です。正規の輸入手続きを行い、輸入しております。
今後、国内のPMDAによる国内医療機器としての承認の可能性はあります。
執筆 大原 奈津恵 (形成外科医) なつクリニック院長
参考文献
[1]Bernstein EF, et al. Low-fluence treatment with a novel fractionated 2,910-nm fiber laser improves photodamage. Lasers Surg Med. 2023;55(1):35–45.
DOI: https://doi.org/10.1002/lsm.23624
[2]Selim MM, et al. Clinical evaluation of a new fractional ablative 2910 nm erbium laser on photodamaged skin: A pilot study. Lasers Surg Med. 2023;55(8):715–723.
DOI: https://doi.org/10.1002/lsm.23714
[3]Murray TN, et al. Full-face and neck resurfacing with a novel ablative fractional 2910 nm erbium-doped fluoride glass fiber laser for advanced photoaging. Lasers Surg Med. 2024;56(3):249–256.
DOI: https://doi.org/10.1002/lsm.23764
[4]Bernstein EF, et al. The 2910-nm Fiber Laser Is Safe and Effective for Improving Acne Scarring. Lasers Surg Med. 2024;56(9):755–761.
DOI: https://doi.org/10.1002/lsm.23845
[5]Murray TN, et al. Single treatment scar resurfacing with a novel ablative fractional 2910 nm erbium-doped fluoride glass fiber laser. Lasers Surg Med. 2024;56(1):19–22.
DOI: https://doi.org/10.1002/lsm.23729
[6]Murray TN, et al. Histological analysis of laser-enabled tissue coring with a novel 2910 nm erbium-doped fluoride glass fiber laser. Lasers Surg Med. 2024;56(5):462–465.
DOI: https://doi.org/10.1002/lsm.23792
[7]U.S. FDA. UltraClear Laser System, 510(k) K210847(2021)、K233803(2024)。
[8]Acclaro Medical. UltraClear 2910nm Cold Fiber Laser 公式製品資料。


