炎症後紅斑(PIE)の原因と治療 - なつクリニック

なつクリニックのロゴ

0798-66-0008

炎症後紅斑(PIE)の原因と治療

ニキビ跡の赤みが消えないのはなぜ?

赤いニキビ跡は必ずしもニキビ跡ではない

ニキビの炎症がおさまっても、平らな赤い斑点が残ることがあります。これは炎症後紅斑(PIE)、または炎症後の斑状紅斑と呼ばれ、炎症後の血管性変化が関係します。茶色い色素沈着(PIH)とは主な成り立ちが異なります。

ただし赤いニキビ跡だと思っていても、内部に炎症がくすぶっていて、原因となるコメドがあり炎症がつづいていたり、不良肉芽といって、排出しないと改善しないことがあります。これらの場合は、医療機関にて適切な処置を行う必要があります。

赤みが長引く理由

炎症に伴う微小血管の拡張などの変化が残ると、ニキビが治っても赤みが目立つことがあります。時間経過で薄くなっていきますが、持続期間には個人差があり、「何か月で必ず消える」と一律には言えません。赤みが残りやすいタイプの方では、半年経過しても赤いままのこともあります。

1)真皮浅層の微小血管拡張

ニキビの炎症によって、真皮乳頭層の毛細血管が拡張します。通常は炎症の改善とともに赤みも減少しますが、血管性の変化が残ると、炎症性丘疹が消えた後も紅斑が持続します[2]。
つまり、ニキビそのものが治ったことと、血管性の赤みが消えることは必ずしも同じではありません。

2)炎症後の血管リモデリング

炎症を起こした皮膚では、組織修復の過程で血管の構造や分布にも変化が生じます。血管新生や血管リモデリングは創傷治癒に関わる反応であり、VEGFなどの血管新生関連因子が関与します。
ただし、PIEが長引く主因がVEGFによる血管新生であると、臨床的に確立されているわけではありません。
持続する血管拡張や血管リモデリングはPIEの病態として考えられていますが、その寄与の程度には未解明な部分が残っています[2,3]。

3)炎症の遷延と表皮の変化

ニキビでは、目立つ赤い丘疹がなくなっても炎症性の変化が残存することがあります。また、炎症後の表皮が薄い状態では、真皮の血管成分が目立ちやすくなることもPIEの機序として報告されています[2]。
したがって、赤みが長引いている場合には、残存する炎症と、炎症後に形成された血管性変化を区別して考える必要があります。

赤みと色素沈着は混在することも

PIEは主として血管性の変化ですが、炎症後色素沈着(PIH)と併存することがあります。
アジア人50例のニキビ後色素沈着を対象としたダーモスコピー研究では、顔面病変の56%に毛細血管拡張などの血管性所見が確認されました[4]。
つまり、赤いニキビ跡を単純にPIE、茶色いニキビ跡をPIHと完全に二分できるわけではありません。

ニキビ跡の赤みはどう治療する?

まず、活動性ニキビの炎症を抑え、新しい赤みを増やさないことが重要です。
すでに残存した血管性の赤みには、パルス色素レーザー(PDL)や、アドバテックス(589nm&1319nm の2波長レーザー)などの血管を標的とした光・レーザー治療が選択肢となります[5]。

 


参考文献

[1]Bae-Harboe YSC, Graber EM. Easy as PIE (Postinflammatory Erythema). J Clin Aesthet Dermatol. 2013;6(9):46–47. PubMed PMID:24062874

[2]Amiri R, et al. Treatment protocols and efficacy of light and laser treatments in post-acne erythema. J Cosmet Dermatol. 2022;21(2):648–656. DOI:10.1111/jocd.14729

[3]Textbook on Scar Management. Scar Symptom: Erythema and Thickness. NCBI Bookshelf. 本文

[4]A Comparative Study of Dermatoscopic Features of Acne-related Postinflammatory Hyperpigmentation in Facial and Nonfacial Areas in Asian Patients. 2022. PubMed PMID:36061483

[5]Kalantari Y, et al. Post-acne erythema treatment: A systematic review of the literature. J Cosmet Dermatol. 2022;21(4):1379–1392. DOI:10.1111/jocd.14804

 

関連情報: アドバテックスレーザー(赤みの治療)

執筆 大原 奈津恵(形成外科医)なつクリニック院長

  • このエントリーをはてなブックマークに追加
  • Pocket